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U.Ge Lab コラム

幸せペンタゴン 私のアオハル ~輝きの時~ ④

022年度、U.Ge研究会では、「幸せ」に関する調査をおこないました。調査の中では、活き活きとしたU.Ge世代(50歳以上のUpper Generation)の方々が多くいらっしゃいました。望む幸せ志向に、色や暮らし方の傾向が見られ興味深く思いました。
各世代についても同様の調査をしましたが、40代は理想の幸せに対して、現状は乖離がある世代と分かりました。仕事や家庭からの要求に応え、自分の時間が十分に持てない、今の自分と重なります。
そんな私が思い浮ぶ「アオハル」は、多くの方と同様に大学生の頃です。関心のあることだけを学び、興味のあることをすぐに実行し、多くの人と交流し、社会的義務や煩わしいこともなく、心地の良い刺激にあふれた充実した毎日でした。

「アオハル」が輝いていた時と思い出されるのは、満ち足りた気持ちと、そこにあった美しい情景が、鮮やかに記憶されているからではないでしょうか。私は、過ごした場所が京都ということもあり、伝統的な催し・名所・自然要素が、五感と一緒にインプットされています。
4月 藤色のカーテンと白玉砂利のコントラスト、絵巻物が具現化されたような平等院
5月 清々しい日差しの中、光の中で揺れて解けていく白川の柳緑
6月 靄がかかった植物園の朝、瑞々しく際立つ蓮やバラの紅
7月 御手洗祭の夜、黒く冷たい水面に映る蠟燭の煌めき、
8月 サウナのような熱とセミの喧騒、蜃気楼が見える流れ橋
9月 真夜中の静寂に、墨を垂らしたような渡月橋の月夜    
10月 山に囲まれた小さな夕焼け空のビーナスベルトグラデーション
11月 永観堂の逆さ紅葉、吸い込まれそうに深く、足の下に広がる世界、
12月 五色と骨董色、新春を迎える草花、色が大渋滞した終い弘法
1月 新春を告げる、香りと繊細な工芸品のような北野の蝋梅
2月 鞍馬山、根上りの陰影を浮き立たせる薄く積もる雪
3月 暗緑の岡崎疎水にたゆたう、無数の薄桃色の花びら

美しい情景、その瞬間に見た色、リアルに思い出せる感覚は、今でも心を満たしてくれます。

今、私が住んでいるのは横浜です。都市、工場、海。空は広く、気候は穏やかで、太陽光も柔らかい環境です。我武者羅な「朱夏」という年代に、いくつの思い出が、どのような映像と色で蓄積されていくのでしょうか。悲しいや寂しい出来事も、幸せや楽しいことと同様に、美しい色として残って欲しいと思います。

BASFジャパン株式会社 カラーデザイン・アジアパシフィック 大西美加