私の幸せの風景 ― 多様な色の世界 ―
「幸せの風景」が今年度のテーマである本連載ですが、今回このテーマを聞いた時に真っ先に思い浮かんだのは、「人々が自由に行きかう街並み」の風景でした。新型コロナによる自粛により、何の不安や心配もなく外へ出かけられるということが、実は幸せだったと感じた方は多くいらっしゃるかと思います。
緊急事態宣言が明けた10月以降、食事や買い物などに少しずつ制限がなくなってきたことは、改めて幸せだと実感します。またこの自粛生活を通して、その活気ある街の風景から得られる発見も、自分にとっては幸せだったと気づきました。その土地の建築物や自然の色の調和、その場を行きかう多彩な色を纏った人々。そこに使われる多様な色の中には、自分がこれまで考えたこともないような色の組み合わせがあり、またそれが魅力的に見えるという発見があります。自分の中で凝り固まっていた「こうでなくちゃいけない」という考えが、街並みに溢れる色を眺めていると、人それぞれ多様でいいんだという視点に切り替わります。
また色と多様性でいえば、色の見え方にも人それぞれ多様性があります。私は業務の中でこの色弱※の方のカラーコミュニケーションというテーマに関わるようになりました。少し前には、東京パラリンピックの開会式の際に、各国の国名のプラカードが、色弱の方でも識別できる配色になっているということが話題になったかと思います。また本研究会のテーマであるU.Ge世代との関連で言えば、白内障も色の見え方に影響を及ぼします。こうした課題に向けたカラーユニバーサルデザインの事例は様々なものがありますが、弊社では先日、色にまつわるコミュニケーションをスムーズにするために「UDカラーネーム(略称:UDCN)」というものを発表しました。
※医学・学術用語では「色覚異常」という用語が使われていますが、弊社では「色弱」という語をあてています。
これは、この世にある様々な色を体系的に分け、またそこに様々な色覚の方への聞き取りをして得た誰もがイメージしやすい155色の名前を付ける、という取り組みです。この取り組みのスタートとして、弊社ではUDCNを弊社の商品である床材に付けるということを始めました。UDCNを付けることで、例えば色弱の方にとってはこれまで区別しづらかった製品色を名前で識別できるようになり、製品を選ぶときのサポートになる他、あいまいになりがちな色についての会話もスムーズにするなどのことに繋がると考えています。UDCNついては、今後弊社からもWEBサイト等を通して情報を発信していく予定です。
U.Geカラー研究会の今年度テーマである「幸せ」についてメンバーで話し合う中で、幸せの形とはその人の価値観や経験などによって多種多様であり、また同じ人間であっても年齢を重ねることでその形は変容していくことを実感しました。自分自身においても、これから経験したり触れるものが私の幸せの形をどんどん変えていくんだろうと想像する中で、このUDCNを通して色に触れるという経験が、誰かにとっての「幸せの風景」に繋がればいいなと思います。
田島ルーフィング株式会社 床材開発部デザイングループ 本田真帆