私の幸せの風景 -旅で触れる幸せ-
私ごとだが人生100年時代にもうすぐ70歳という大台を迎え、自分の幸せって何なのかと考えたときに、どうも身近な幸せに目が行ってしまう。そんな中で、身近な幸せとして「旅(旅行)」というキーワードが浮かんだ。U.Ge研究会のアンケートでもコロナ禍が終わったらやりたいことの筆頭に出てくる望みである。
何号か前のコラムで神津氏が旅について、ネットだからこそ発見できる新たな出会いや感動について書かれており、新しい視点として素晴らしいと思った。その着想に敬意を表しつつ、リアルな旅も捨てがたいので、ここでは私なりの旅の幸せについて書いてみることにした。
8年ほど前にはなるが、定年を機に妻とスペインに行った。妻はイタリアを希望したのだが、ガウディが見たくて私のわがままを聞いてもらった。海外へは仕事で行ってはいるが、新婚旅行は国内だったこともあり妻と二人でというのは初めてだった。手間をかけたくなかったのと、現地で夫婦で路頭に迷うのは避けたかったのでツアーを選択したのだが、予想以上の感動をもらったのを覚えている。
ガウディの建築サグラダファミリア・グエル公園、穴ぐらフラメンコ、アルハンブラのデザイン、ピカソのゲルニカ、オリーブやヒマワリの畑、場の雰囲気と共に味わうワイン・チーズ・生ハム、街並みの色、言葉の壁を超えた人となり、などなど・・・。その土地の自然、色に触れ、空気に触れ、土に触れ、文化に触れ、心に触れることも幸せの一端なのかもしれない。
バスの車窓を流れたアンダルシアのひまわり畑の黄色や間隔をとって植えられたオリーブの光と影は印象的であり、太陽のちからを感じた。
ピカソのゲルニカ(著作権の関係で画像は載せられないのが残念)には色はないが、その構図と濃淡からは色彩以上の迫力と感情がうかがえた。
穴ぐらでのジプシーフラメンコの情熱的な色彩と踊りの中には、日本の神事としての御輿や和太鼓から感じるパワーとは異なる、ひとの生きるエネルギー、あえて言えば魂の叫びのようにも感じた。
アルハンブラの細かい装飾デザインと土(焼き物)と水と緑の調和にも感動を覚えた。
ガウディの作品には、自由な発想による構成、デザイン、色、そして素材が楽しげに遊んでいた。
特にサグラダファミリアの内部はまるで大きな宇宙ステーションの中のようだ。造形と光のハーモニー、一般的な教会のイメージとはまるでかけ離れている。
この旅を通じて、多くの元気をもらえる色、幸せの色彩に出会えた。
冒頭に書いたように、この旅の経験は8年という月日が流れてもやはり鮮明な記憶に残る幸せの時間だったと思う。
幸せの視点で考えると、妻と一緒だったというのも大きな要素かもしれない。どこへ行くかはもちろんだが、誰と行くかも大切なことなのだろう。旅の印象を共有し、振り返ってみることも楽しみであり、これもまた幸せな時間になりうる。
人には旅を通じて幸せを味わいたいという潜在意識があるような気がする。そう考えると、もちろんスペインとの出会いは素晴らしかったのだが、その後の旅でも同じような幸せを受け取っている。海外、国内、場合によっては案外近くにあるそんな旅を探してみるのもいいのかもしれない。
でもやっぱりグランドキャニオンやモンサンミシェルに行ってみたい今日この頃である。
眞Planning 池ノ谷 真司